2014年8月26日火曜日

「誘蛾灯」鳥取連続不審死事件/青木理

 

  首都圏での連続不審死事件の被疑者は木嶋佳苗、そして同じ頃、鳥取で起きた連続不審死事件の容疑者は上田美由紀、ほぼ同時期に起きた事件だが、直接の関係はない。
 しかし、年齢は三十代半ばでほぼ同じ、二人ともどちらかといえば、小柄なのに体はでっぷり肥満体、お世辞にも容姿端麗とは言えない。
 佳苗の事件は埼玉、千葉、東京といった首都周辺の大都市圏を舞台とし、「セレブ」を気取った事件。「婚活サイト」で知り合った男たちから巻き上げたカネで買いあさったブランド品を身につけ、ベンツを乗り回して一見贅沢な生活を見せかけ、最終的には自殺に見せかけて男たちを殺害したとされる事件。
 木嶋本人は獄中から私小説を書ているらしい。
そして、青木理が取材先に木嶋を選ばず、上田美由紀を選んだことに、上田に対し嫉妬している。未だ色気プンプンだからあきれる。
 上田は上田で「時期が来たら本当のことを話す」と言うが、ご両人の置かれた状況は、現在、控訴審段階で死刑判決、本気で闘わないと国家に殺されてしまう状況にあるのに、その深刻さが妙に見えてこないのが不思議だ。

 鳥取の事件、舞台は山陰鳥取の地で、美由紀は昔ながらのしがないスナックホステス。
 疲れ切った鳥取の歓楽街の、地元では「デブ専」と揶揄される場末のスナックに漂っていた5人の子供を持つ女だが、妻子ある男たちまでが次々に美由紀に惹かれ、多額のカネを貢ぎ、幾人もが不審な死を遂げていった。
 一人目は、読売新聞鳥取支局記者、二人目は、警備会社社員、三人目は、鳥取県警刑事部の警察官、4人目はトラック運転手、5人目は、電気店経営者と続く。
 著者・青木理は、人口60万人を切った鳥取県の状況なども背景に、当地の人間模様に迫りながら、事件に切り込んでゆく。
 「首都圏・・・事件」ではなく「鳥取連続不審死事件」を選んだ彼のセンスに共感する。
 現代社会、想像もできない事件が続出している。事件を通じて時代を読み解く力も必要だろう。



 次の本は清水潔著「犯人はそこにいる」。

北関東連続幼女誘拐殺人事件を追ったノンフィクション。
ルパンはそこにいる。

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