歌人・門倉まさるさんからはがきが届いた。歌が5首書かれている。教師を定年退職して何年たつのだろうか。岩鼻町を拠点に娑婆を観ている人だ。町内上之手にあったプール・錦野アメリカンで数年間の夜を裸でのおつきあいさせていただいた自由人だ。ゆえあってこの数年は他のプールに通いながら、群馬の森あたりを散策し、思索にふけっているのだろう。
政権がどう変わろうがワッハッハ われらは水よ低きに溜まる 読売新聞 小池光先生 選
荒涼の河原にひとり棲む 鶏に会わんと急ぐ 霜の道なり 朝日新聞 馬場あき子先生 選
亡き兄と働きたるは烏川 護岸工事のこがらし荒ぶ 毎日新聞 篠 弘先生 選
死力尽くし紙飛行機の空中戦 滞空時間競うだけだが 毎日新聞 河野裕子先生 選
幼き日住みし坂道坂はなく 今住む岩鼻坂の道なり NHK教育テレビ 今野 寿美先生 選
門倉さんは一人で世界中を歩き回るスケールの大きな人物だ。南米、アフリカ、ヨーロッパは勿論、東南アジア、中国の北京経由で朝鮮民主主義人民共和国まで好奇心の向くところ、分け隔てなく足を伸ばしている自由人だ。
実は門倉さんの膨大な歌の一部を頂いているのでいつでも小出しに載せることができる。
国際色豊かな歌をいくつかピックアップする。
制服の白きアオサイ女子高生 それぞれ白の刺繍なり
オアシスの小さな店もうず高く ナンを重ねて客を待つなり
一日に五回の祈りウイグルのガイドの長寿の秘訣とぞ言う
若き日のサハラの旅は種赤きサボテンの実の甘き思い出
アラビア海ひとり泳げば禿鷹は 空に舞いつつ我をみており
ガンジスの流れのままに空仰ぎ浮きつつあればわが身愛しも
プラハなる路面電車の終点は レールが円となりて戻りく
「叫び」とのムンクの絵なる本物はうつろなる眼の奥ぞかなしき
中央アジアに青く小さく咲くという花の種買う君と別れて
いにしえの抗日映画ばかりなり 北朝鮮の宿のテレビは
神の使徒荒野に向い叫ぶとか 荒野とは我ら民衆
バルト海 透きたる水冷たくて 2㍍ほど泳ぎたるのみ
ガンジスで泳ぎたる後案内の少年我を友達と呼ぶ
ということで際限なく続いてしまう門倉ワールド、果てしない宇宙の中の小さな星に生き、そのことを自覚している門倉さんだからこそ歌えるのかもしれない。
「政権がどう変わろうとワッハッハ 我らは水よ低きに溜まる」と。しかし、本音は呆れかえって怒りまくっていると思う。しかしそこは人生の達人、このような歌になる。
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