初沢亜利写真集
《隣人・38度線の北》という新鮮な驚きの写真集を見つけた。
「あんなところ誰にも撮らせたことはないんです。でもね、少しでも日本人に我々を理解してもらえたらと思ったんです。」(現地案内人の言葉)
案内人 「公安の人が来たらなんて説明すればいいのですか」
初沢 「星空と万景峰号を撮影しています、と言えばいいじゃないですか」
案内人 「そんなことが通用する国じゃないんです。初沢さんはちょっとの間拘束されてもすぐに解放されるでしょうが、その後我々がどうなるかわかりますか?
自分だけが良ければいいんですか?それでは他のカメラマンと一緒じゃないですか。」
(ー満天下の星空の下、停泊されたままの万景峰号撮影時の案内人との会話)
写真それ自体に何の説明もない写真集。それが新鮮でいい。
あとがきという意味での「滞在記2010-2012」が興味深かった。 二人の案内人との距離感が伝わってくる。
国家体制の制約のなかでもなんとか理解し合おうという互いの感触があふれている。
文中、黄虎男朝鮮対外文化連絡協会局長が出てくる。
彼の人となりを若干だが知っているので、(訪朝時にお会いした)一層、臨場感を膨らませた。
≪この写真集こそが北朝鮮の真実である、というつもりは毛頭ない。真実とはそれ自体多面的なものであり、どこに眼差しを向けようとも、それらは無数の真実の一部でしかありえない。『隣人』には明確な意図も介在している。「違和感ではなく共感を拾い集めること」。マスメデイアの情報に偏りがあるのと同様に、この写真集にも一定の偏りがある。そのような前提で見ていただいた方がむしろ安全であろう。(初沢亜利)≫
この姿勢が気に入った。
写真集「38度線の北」 著者 初沢亜利
発行所 徳間書店 2800円
そこへ≪「証言と遺言」(92歳伝説のフォトジャーナリスト福島菊次郎≫が届いた。発行所はデイズジャパン。3600円。
また写真集かよ、と言われるかもしれないが、現代と歴史を知るうえで必須な教材だ。
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