1990年5月、薬師寺回廊第一期工事。最晩年期の西岡常一は癌に冒されながら若者たちに最後の教えを授けていた。
「千年の檜には千年の命がある。」「木は鉄より強し」。
速さと量産だけを競う、模倣だけの技術とは根本的に違ういにしえの叡智、明快な指針。
法輪寺三重塔、薬師寺金堂・西塔の再建を棟梁として手がけ、飛鳥時代から受け継がれていた寺院建築の技術を後世に伝えた「最後の宮大工」のドキュメンタリー。
以前、法隆寺の棟梁をしていた西岡は国や学会などから鋼材や鉄も使用するよう要請を受けたが、木の持つ強さを確信していた西岡は頑として拒否、法隆寺との間にもすきま風が吹き、棟梁を辞していた。
中で、「唐尺」「高麗(こま)尺」という言葉が出てくる。法隆寺を建てた時代は建築の世界でも中国や朝鮮半島の影響が強く残っていたことを示している。
法隆寺自体朝鮮様式の寺であることも指摘されていた。
一昨年、法隆寺、薬師寺を参観したこともあり関心を持って観た映画だ。
シネマテーク高崎で7月6日まで上映。
もう1作品「百合子・ダスビダーニャ」
チェーホフなどロシア文学や演劇の名翻訳家として知られる湯浅芳子と戦後民主主義文学の旗手・中條百合子(後の宮本百合子)の出会いと濃密な青春期を描く。
「スカートをはいた侍」と呼ばれ「女を愛する女」であることを隠さずに生きた芳子と、天才少女作家としてデビューし、早くに結婚した百合子は、出会ってすぐに惹かれあった。
類いまれな才能をもった二人の女性は、どんな恋より情熱的で深い信頼関係で結ばれていった。
7年間生活をともにしたその最初の1ケ月半の日々を描いた作品。
中條百合子はやがて日本共産党の宮本顕冶と結婚することになる。
人に歴史ありだ。
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